【変換小説】「 」01-1

「　　　」01「出会い」1話です。
主人公の名前を変えることができます。
詳しくは「はじめに＆目次」http://ameagari3.blog.shinobi.jp/Entry/107/をご覧ください。

まえがき：名前変換まだ全然なくてすみません。というか主人公しかしばらくでてきません。

内容は「つづき」から。

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　起床、朝七時。緑の木の芽、きらめく用水路、こぼれる花、つくし。
朝ご飯前に、部屋の掃除をしようとガラス戸を全開にすると、涼しい風が胸に入ってくる。

「これぞいなか！　これぞ日本、って感じ」

　私―雨間とゆ―は、ほうきを手に持ったまま、ぐっと背伸びした。



　 生まれは都会だけれど、私は便利できらきらした街を捨てて、ほんの一ヶ月前にこの山奥へと引っ越してきた。おじいちゃんが亡くなったからだ。
　といっても、 百歳を越えてたから大往生だし、死に顔がそれはもう『生涯に一片の悔いなし』みたいなすばらしい顔だったので、悲しい気持ちはあまりひきずらなくて、今と なっては感動さえしてる。

　その感動をくれたお礼に、というわけではないけれど、どうしても小さい頃から交わしてきた『おじいちゃんの本屋を継ぐ』という約束を果たしたくて、私はお父さんとお母さんに頼み込んで、隣家と一キロも距離があるのが普通なこの町へと住むことに成功した。

「そして一ヶ月、私はなんとか暮らしにも慣れてきたのであった、と」

　サッサッとちりやほこりが飛んでいく。ほうきを畳の目に沿わせて、ごみを縁側の方に掃き出すと、靴下の裏も汚れないステキな部屋の誕生だ。
　 こっちに来てから変わったのは、一人暮らしになって一人ごとが多くなったのと、掃除がうまくなったことだった。おじいちゃんがリフォームしてくれていたので、トイレがぼっとんじゃなくて水洗になってたりしてありがたかったけれど、ほとんどの部屋が
「タタミ、フスマ、ショージ、トコノマ、チャブダイ」
と和風が標準装備だったので、最初は手入れは？　手入れはどうするの？　と謎だらけだった。

　そんな現代っこな私に、母は（この家は母の実家でもある）仰天して、方言で私を罵りながら、みっちり鍛えてくれたので、案外掃除機を使うよりほうきのほうが楽だと知ったり。
　はじめてこの家をすべて掃除しきり、母から
「これな らじーちゃんの家も満足するだろう」
とお墨付きをいただいたときは、嬉しくて友達にメールした。

「今日、掃除ができたよ！　日本の文化って計算されててす ごいね！」

　というメールはことごとく
「わーすごいね、おめでとう」
という言葉が返事に並んでいて、そのとき『都会っこは冷てぇ』という感覚を理解した。

「さーて、このぐらいでいいかな。あ、こたつ片づけないとだめだっけ」

　 ほうきを一旦縁側の隅に立てかけて、昨日の夜に隣室においやったこたつを思いだし、同時に私は明日を想った。明日はジャンプの単行本発売日だから、村の子供がこぞってうちの本屋に殺到する。
　この村の娯楽の供給源はほとんどうちの店で、ちょっとしたお菓子からゲーム・マンガ・参考書と手広くやっている。おじ いちゃんはいつも昼から店を開けて、夜の八時になると店を閉めていた。
　街の塾にいく子が多いので、夜重視型にしたらしい。私もそれに倣っている。

「ここら一帯なんだかんだで子供多いし……明日受注書まみれになるんだろうなあ。もみくちゃにされるんだろうなあ」

　一応発売日までに本が届くようにはなってる。けれど、本は本屋に配られる数が決まっていて、結局うちみたいな地域にはどんな人気マンガでも十冊くればいいほうだ。結局は注文書を書いて取り寄せるしかない。

「うん、明日片づけるのは無理だし、先延ばしすると忘れそうだし。片づけてから朝ご飯にしますか」

　隣の部屋のふすまに手をかけて横にひくと、月見障子を通して、柔らかな朝日を受けるこたつ（とこたつ布団）が鎮座している。

「この冬はありがとう。山の寒さが身にしみるとき、私を暖めてくれて……来年の冬また会おう！」

　こたつの天板の、手になじむような丸みを一なでしてみてから、上にたたんだこたつ布団を乗せて、手を回してぐっと持ち上げ、腰で支えた。



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