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学名:アンチノミウス ルサンチマン アンビバランサー 生態系:雨の日でもそうでない日でも傘で顔を隠して考え事

天邪鬼の雨宿り

   

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養蚕文庫さま宅の浮森かや子嬢の『ひとり芝居』

雨上です。

ひとまず、
養蚕文庫さま:http://page.freett.com/siro_toto/
パンプキンサウンドさまの紹介ページ:http://pumpkinsound.com/02_dg/index.htm

『詞と曲と歌:浮森かや子
プロデュース:Pumpkin Sound
養蚕文庫
×Pumpkin Soundのコラボレーションアルバム』
と、そううたわれておりますのが『ひとり芝居』。
という、音楽CDです。おそらくインディーズ、もっと? いわば同人音楽。
(インディーズの意味がいまいちわかっていない私であります。)

浮森かや子さん、確か、いわゆる乙女ゲーの
オープニングを歌ってらしたので「知ってる!」とおっしゃる方も
それなりに多いかもしれません。
(グリム童話をモチーフにしたゲーム。オープニング素敵でした。
ムービーもさることながら、かや子さんの声いいなあ、
このチョイスはナイス、とうなずくほど)

おまえはいつから好きなんだ、と訊かれましたら……
すいません最近です、にわかです。
どういう経緯で一方的にお知り合いになったかというと、
ニコニコ動画にあがっていた宣伝用動画にめぐりあったことからはじまります。
そして迷わずAmazonで購入。便利な時代で本当によかった。

さて、そろそろ感想を書かせていただきます。
というか、すばらしいからみんなも聴いてみてよ! な愛を語ろうと思います。

*まずは1曲目、『わたしをお食べ』
不思議の国のアリスです。アリス大好き。原作万歳派です。

京都民なので『おたべ』でヤツハシを連想したバカっぷりはいつものことですが、
そんな思考バ回路を一気に別世界へと案内してくれるのがこの曲。
小さいけれど深い緑の木々の間をぬって、座席の間をすりぬけ、
落ち着いたところであたりは暗くなり、幕があがるわくわくどきどき感。
まさしくこれです。
特に子どものころに劇を見て、劇の中の世界が舞台の上から自分のそばまできて、
手を引っ張られてつれこまれ、包み込まれて夢中になってしまう、楽しい時間。
世界観が脳に焼き付けられる喜びとでもいいましょうか。
私は音楽に頭を支配されたい人なので、1曲目からツボでした。
最近の曲には足りない、「存在自体からしてひきこまれる」魅力があります。
短い曲なのですが、このアルバムの中で一番好きかもしれません。

*2曲目、『月飼い』

おたべの『キノコがぽこぽこ湧いてきそうな音』から一転、静かな曲調。
しかし、しっかりと紡がれています。何がすごいって、聴いてると色が見えるんです。
青白い月明かりが鋭く、月飼いの少年は対比としてやわらか。そんなイメージ。
静かでありながらブレることのない。
片手で数えられるほどしか、DTMやってない私。作曲なんかしたらごちゃごちゃさせがちな私。
楽器の数が10ないと情景のひとつも作れない私。
そんな私だからでしょうか、静かでありながら聴いている人自ら口をつぐみ、
耳を一心に傾けたくなるようなメロディーを作れる人は心からすごいと思います。
ダレてる部分がないんですよね。音や歌詞が優しいだけじゃ、こんなのは作れません。

*3曲目、『魔女狩り』
物語として成り立っている曲。人の心臓の音と同じくらい力強く、迫力のあるメロディー。
いえ、近づいてくる群集(レベル:革命軍)の熱や吐く息、罵声などを整えた響きかとも。
悲恋をうたいあげる歌詞ですが、そこらのぎとぎとした悲恋ではありません。
上品に「人っぽさの象徴としてのどろどろ」要素を含んでいることをチラリズムしながら
「もののあはれ」を見事に体現しているとしか言いようがありません。
というか、それ以外にうまい言葉が見つからない。
だって生きるかなしみもあるんです。
外国語(おそらく)が混じってる(はず)のですが、ええ、魔女ですとも、あなたは魔女です。
声が広がっていくように聴こえる効果のかかっているところがありますが、それが邪魔になっていない。
目の前まで3Dで飛び出してくるかと思いました。曲を聴いててそんな錯覚するなんてそうありません。
凛として鮮明な儚さ。立体的な透明。

*4曲目、『はいかぶり』
シンデレラさまですね。キュサンドロン。これはおたべと1、2を争うほど好きです。
魔女で、生きるかなしみもある、と書きましたが、こちらはダイレクトに
「生きること」そのままがテーマなのではと、深読みしてみます。
ガラスと鏡でできた大広間を、童話のハッピーな状況とはかけはなれた
「はいかぶり」がひとりでくるくる踊ってるような想像。
オルゴールの音(のはず)がコトコト鳴っているのが切ない。
これはかや子さんの声でなければだめです。かや子さんだから、余計に生きるのでしょうね。
ぐしゃり。の部分と最後のららら……とで
「もういいよ! 私の手をおとり! 魔法使い呼んできてあげるから!」
叫びそうでした。君は世界の中心で叫んでも許されると思う。(私の呼ぶ魔法使いは黒魔術師ですけど)
みにくい、と自覚のある人はもう十分みにくくないと思いつつ、
でも本人はそういう論調では納得できないんですよね。
そんな感じに「救い」ってなんだろう、どうすればいいんだろう、とヘッドホンをつけながら
舞台のまわりをうろついてしまうこと間違いなしの曲です。

*5曲目、『十三番開放口』
鐘の音。月あかりだまりの路地裏。
情景を通して誰かさんが見えてる感じです。
『小さい秋見つけた』という童謡と同じような、直感で感じる曲。
これは言葉は野暮かもしれませんね。なにか評価をくだそうなんてとんでもない。
エッシャーの騙し絵で建物をつくりあげて、それを音楽で表現すればきっとこんな感じ。
わかりにくいですね。つまり、やっぱり、考えるな、感じろ、というやつでしょうか。

*幕ひきへの6曲目、『曲芸団のゆめ』
これがラストなのには、ある意味背筋が逆立ちます。
はじめも良ければ、おしまいも見事。くどくもなく、かといって薄くもなし。
サーカスらしさも満点で、しかしちょっとイメージがセピアっぽく見えるのは、
やっぱりこれが『曲芸団のゆめ』だからなんでしょうか。
派手な曲芸団ではなく、ほどよく懐かしさのある曲芸団。
一周して、流れ流れて、戻ってきたような気にさせる伴奏。
ふわふわとした静けさ。
ふかふかの安楽椅子にでも座ってリズムに合わせて揺れられたら、
いくらでもそうしていたいなーと思います。
終りらしい終り。そして『ひとり芝居』というタイトルが重なり。
青い鳥の終わり方のような、『幸せ』が息づいてます。

*フルカラーブックレット
……額縁にいれてかざってもよろしいでしょうか。
というほど、やわらかであたたかなひとりっぼちな、めくるめくイラスト。
歌詞をみるだけではなく、(歌詞は『見る』ともっと表記の仕方もあって、より味わい深いですよ)
ぜひとも絵をおいかけてください。ええ。いちころにとりこですよ。芝居の中の世界に。
まつげうさぎを追いかけて。

*『ひとり芝居』
つまりまとめですね。
うーん、まとめというより、私の琴線が鳴るのはなぜなのか、というあたりをば。
つまり、です。
『いかれたしあはせ』の喜びがあり、悲しみがあるからです。
喜びだけならおたべ、悲しみだけならはいかぶり、が一番わかりやすいでしょうか。
(そしてそこ一番反応してる私って……私もわかりやすいんだろうか……)

なんというか。
閉じこもりたいけれど、閉じこもりきれてなくて、ちゃんと現実も知ってしまってるんです。
だけれど、現実になじめるわけでもなし。だから自分のことしか見えてないふりをする。
それが醜くて好きではないけれど、自分が幸せになるにはどんどんそうするしかなくて。
いろいろなことに目をつぶることのあきらめ。もがき。ため息。つかえ。

これが感傷というものだ、と私は思います。
感傷って、どちらかといえば悲しみよりもあきらめに近いんです。
あきらめながらも希望は持たずにいられない、それが悲しくなってくる。
世界に取り残されるのも、本当は子どものままでいるのはいかれているということも。
そんな感じ。(私情挟みすぎでしょうか)

最近のメジャーソングに辟易とされている方、あるいは私と同じく感傷おいしいです、な方、
とりあえず文学のにおいを残した芸術を求めている方、どうぞ一度お聴きになってください。
紹介ぺージにて視聴できたはず。あとAmazonでも。そしてCDを買ってブックレットでとどめのため息を。
それでは、まとはずれかもしれませんが、私のレビューもどきはこれにて終りです。

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天邪鬼データ

HN:
雨上 そら
年齢:
690
性別:
非公開
誕生日:
1333/08/19
職業:
全体的にものかき。
趣味:
人類は数年で滅ぶと呟くこと。

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